不注意で壁に車をぶつけたり、縁石に擦るなどして塗装が剥がれた際に、車両保険が適用されるか気になるものです。

ここでは車の塗装が剥がれた際に全塗装が保険の対象となる条件など解説します。

車の塗装が剥がれるシチュエーションとは?

車の塗装剥がれ修理で保険は使える?全塗装で使える条件とは

車を走行する上で、こすり傷や車をぶつけて塗装が剥げてしまうことなどは稀にありますが、その他にも塗装が剥がれるシチュエーションとはどのような時でしょうか。

免許取り立てでの走行時

免許取り立てでの初心者走行時などでよくあるのが、運転を誤りガードレールにぶつけたりサイドミラーを電柱にぶつけたりなどです。

狭い路地を走行中

車の塗装が剥げるトラブルで最も多いシチュエーションは、狭い路地を走行中でのうっかり衝突です。

右折や左折時に車幅を誤り、ガリガリっと擦って塗装が剥げて苦い思いをしたなど初心者ではありがちではないでしょうか。

縁石や段差を乗り越える走行時

縁石や段差を乗り越える時に、車の車高よりも思ったより縁石が高い場合や段差が深い時などバンパーの下を削ることなどよくあります。

走行中での飛翔物の衝突

走行中は前方や横から飛翔物が飛んでくる危険があります。

特に高速道路走行時などは、大型のトラックの後ろを走行していると前方から小石などが飛んできてボディに衝突して傷が入ることが多々あります。

事故での塗装剥がれ

自損事故や不注意によりぶつけられた際も大きく塗装が剥がれる恐れがあります。

通常の塗装剥がれよりも損傷が激しくなることや、剥がれ箇所が広範囲になることが予想されます。

全塗装が自動車保険の補償範囲として適用されるケースとは

全塗装が自動車保険の補償範囲として適用されるケースとは

車の塗装が剥がれる要因は、上記のように様々なケースがあります。

実際に全塗装することになった場合には、自動車保険で修理することができるのでしょうか。

全塗装は保険の対象になる?

自動車保険を利用して塗装の剥がれを補償することに対して、裁判所は様々な公判で原則として「特別な事情がない限り部分塗装の原状回復で良い」という立場を取っているケースが多々あります。

特別な事情とは、一般的に次のようなことを指します。

 

「特殊な塗装をしているために、部分塗装では他の塗装部分との相違が明白で、車両全体の美観を損ねる恐れがある場合で、その美観が車両の価値の多くを占めるようなとき」

 

このような定めが通説であり、部分塗装をすることで色ムラなどが出ないケースや、全塗装をすると原状回復するよりも利益を得ることになる(他の関係ない塗装剥がれも塗り直す)ために不当であるという見解になります。

昔と異なり、現在では塗装技術も大きく進歩しているので、大抵の塗装剥がれは部分塗装で対処ができることも要因としてあります。

 

では全塗装が自動車保険の補償範囲として適用されるケースはあるのでしょうか。

自動車保険で全塗装が補償されるのは2つのケースがある

自動車保険で全塗装が補償されるケースには、主に「車両の美観を大きく損なう損害」と「車両に特殊な塗装が施されている」の2つの場合が考えられます。

 

どのような場合にも適用されるのではなく、前提として事故であることが条件になります。

その際に車の外観に大きな支障をきたすと判断された場合に適用されることが多いようです。

 

実際に塗装剥がれで保険が適用される場合について詳細を見ていきましょう。

車両の美観や価値を大きく損なう損害

車両の美観を著しく損なっている場合や、塗装が剥がれたことにより多くの価値が損なわれると判断された場合には、保険を用いて全塗装の費用の補償が適用されることがあります。

お持ちの車が高級車である場合がこれに該当します。

 

車両の塗装は同じ塗料を用いても日焼け具合やコーティングにより色が微妙に異なります。

部分塗装だけでは損傷している箇所と、その周りの部分で微妙な色の違和感が生じてしまいます。

部分塗装では元の状態に戻すことが難しいと判断される場合があるので、保険会社に全塗装が適用されるのか都度確認すると良いでしょう。

 

しかし、部分塗装で周りの色と違和感ない状態に補修することができる場合は、全塗装が認められず部分塗装の保険金しかでない可能性もあります。

すべての塗装剥がれが保険で全塗装の適用を受けることができるわけではないので注意が必要です。

車両に特殊な塗装が施されている

一般的に特殊な塗装とは次のようなものが当てはまります。

 

  • 見る角度や光の当たる角度で美しく色彩が変化する「マジョーラ塗装」
  • キャンディーのように半透明の色を重ねて、透明感のある色を作り出す「キャンディー塗装」
  • ラメをクリアやベースカラーと組み合わせることで独特のキラキラ感を出す「ラメフレーク塗装」

 

このような塗装を施している車両の色は、三者三様で同じ塗装を塗ったとしても部分的な仕上がりが微妙に異なります。

そのためオンリーワンの車に仕上がるので人気ですが、塗装が剥がれた際には注意が必要です。

 

塗装の剥がれを起こした箇所のみの塗装では全体の仕上がりに違和感を解消するのは難しいと判断されることが多いようで、保険を用いて全塗装の費用が補償されることがあります。

 

新車で車を購入した場合には、色や塗料などはご自身で決めるので心配はないですが、中古などで車を購入する場合には、自分の車にどのような塗装が施されているのか1度確認しておくと良いかもしれません。

塗装剥がれに自動車保険が使えないケース

塗装剥がれに自動車保険が使えないケース

塗装剥がれに保険が適用されないケースも理解しておく必要があります。

経年劣化による塗装が剥がれ

全塗装を保険で適用させる条件として、事故である必要があると解説したように、経年劣化による塗装剥がれは自己責任の範疇なので保険では対応できません。

日々のメンテナンスやコーティングを行うことで未然にケアする必要があります。

相手を特定することができない当て逃げ

知らないうちに傷を付けられていて、相手を特定することができない場合も修理費用を請求することができないので保険の適用外になります。

しかし、ご自身の車両保険を使用して補償を受けることはできます。

その際に全塗装まで対応できるかは保険会社と相談する必要があります。

塗装の剥がれはどこで修理する?

塗装剥がれは一般的に「ディーラー」「カーショップ」「板金塗装業者」のいずれかに依頼して修理をしてもらいます。

ご自身で補修するのも1つの選択肢ですが、仕上がり面を考慮するとあまり得策ではありません。

ディーラーへの塗装依頼

ディーラーに全塗装を依頼するメリットは、圧倒的な仕上がりの良さにあります。

ディーラーは車のメーカーやメーカー系の販売会社と特約店契約を結んだ店舗になるので、いわばメーカーの定める高い基準をクリアした技術力の確かな工場に依頼して塗装されるため安心です。

デメリットとしては、中間マージンが発生するので若干費用が高くなる傾向があるようです。

カーショップへの塗装依頼

カーショップにも塗装の依頼をすることができます。

カーショップに全塗装を依頼するメリットは、ディーラーに比べて比較的安価で全塗装をすることができることと、全国に広くチェーン展開しているケースが多いので、どこに住んでいても安心して頼めることです。

 

自社で塗装の設備を備えているショップもあれば、更に塗装専門の子会社へ委託するケースもあります。

繁忙期などは納期に時間が掛かる状況になることがあります。

板金塗装業者への塗装依頼

地域密着型の板金塗装業者にも全塗装の依頼はできます。

板金塗装業者に全塗装を依頼するメリットは、車塗装の専門家なので高いクオリティが期待できることと、中間業者を通さないので安価な対応が期待できる点です。

 

仕上がりに対するコスパを期待することができます。

技術力の有無が仕上がりを大きく左右するので、実績など確認して依頼する必要があります。

車の全塗装を保険適用した後のことも考慮する

車の全塗装を保険適用した後のことも考慮する

前述のように車両保険を使用することで、全塗装の補償ができるケースがあります。

しかしながら、必ずしも保険を適用して全塗装をした方がよいとは限りません。

その理由は、車両保険を使用すると翌年度のノンフリート等級に影響を与えるためです。

自動車保険の等級がダウンする?

ノンフリート等級とは、自動車保険の割増引率を決めるうえで指標になるものです。

例えば、縁石や電柱などに擦って塗装が剥がれた場合などの自損事故は「3等級ダウン事故」に該当するので、車両保険を使用すると翌年度のノンフリート等級が3等級下がることになります。

事故有係数は1年で1等級割引率が上がるシステムなので、ダウンした3等級が元に戻る3年間保険料が上がったままになることになります。

 

その結果、車両保険を使わなかった時の保険料と比べて保険料が割高になります。

全塗装の修理に発生する費用と、車両保険を使った後の保険料の金額を確認して比較する必要があります。

単純に保険を適用するとその時に出費する金額が少なくて済むので、安易に保険で補修してもらうとトータルで考えた際に、実際は余計な出費になっていることもあるので注意しましょう。

車の塗装剥がれを放置する危険性

車の塗装は、車体のデザイン的な要素として美しい色合いを演出するだけではなく、車体が金属劣化することから保護するという重要な役割があります。

車体に錆などが生じないのは、塗装が被膜として雨風や空気中の水分と直に触れないように車体を守ってくれているためです。

 

そのため、塗装の剥がれを放置したままにすると、剥がれた場所だけでなく広範囲に化学反応が進み、車体の劣化を早めることになります。

車体が劣化してしまうと、再塗装するだけでは補修することができず、最悪の場合にはパーツを交換するなど更に高額な費用が発生する可能性もあります。

まとめ

車の塗装が剥がれた際に、修理で保険が使えるケースや条件などを解説しました。

基本的に塗装が剥げた場合には、保険適用を考えると部分的な修理しか対応が見込めません。

しかし、車両の美観や価値を大きく損なう際や、特殊な塗装を施されている場合には適用できることもあります。

保険適用で全塗装できるかどうかわからない場合には、1度保険会社に相談してみるとよいかもしれません。

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