お気に入りの色の愛車を購入しても、長年乗り続けるとだんだん色も劣化して褪せていきます。
いざ専門の塗装業者に依頼すると、20万円以上するような話をよく聞くので気軽に頼む事はできないものです。
ここではそのような方のために愛車を自分でDIYして全塗装する方法や、オールペンする際の注意点など解説します。
Contents
全塗装(オールペン)とは?
全塗装とは可能な限りボディパーツを外して、マスキング処理など施し元の色や別の色に車体全てを塗り替える事を指します。
オールペンという言葉もよく聞きますが、全塗装と同じくオールペイントのことを表す意味になります。
愛車を全塗装(オールペン)する方法
愛車を全塗装(オールペン)する方法は大きく分けて「業者に任せる」方法と「自分でDIY」する方法の2通りあります。
業者に任せる
一般的に全塗装(オールペン)を業者に任せる場合には、ディーラー・板金塗装専門業者・自動車修理工場に依頼します。
中古自動車店やカー用品店でも受けつけていますが、外注に出すケースが多いようです。
専門の業者に任せることで専用のブースで埃などつかないように管理しながら塗装するので、クオリティの高い塗装が期待できます。
自分でDIYする
全塗装(オールペン)は自分ですることもできます。
自分で塗装する場合には、塗装方法によって専用の機械を購入する必要があるなど、事前の準備が多く必要になります。
車をDIYで全塗装(オールペン)するのに必要な道具
車をDIYで全塗装(オールペン)するには事前に準備が必要なものがあります。
必要なものの一例として次のようなものがあります。
耐水ペーパー | 水に濡らしながら使用できるサンドペーパーです。 塗料を塗る前に表面を削る必要があるので、事前に濡らしながら研磨をします。 状況によって320番〜600番の耐水ペーパーを使用します。 |
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シリコンオフ | 塗装面の油汚れなどを落とし、油分を取り除き塗料が乗りやすくします。 |
スポンジ | 車を洗車するのに使用します。 |
マスキングテープ | 塗料が余計な箇所に付着しないように隠すためのテープです。 |
マスキングシート | マスキングテープと共に使用して、塗料がガラスなどに付着しないようにカバーします。 ビニール袋や新聞紙などで代用したりします。 |
サフェーサー・プライヤー | 塗装面の凹凸を埋めるために使用する下塗りとなります。 この処理をすることで塗料の発色がよくなる効果を見込めます。 |
クリアカラースプレー | 塗装後に上から塗る仕上げ用の塗料です。 クリアを散布することで塗料の保護ができ、光沢を生み出します。 |
車用の塗料タイプについて
車用の塗料は大きく分けて「水性塗料」と「ウレタン塗料」の種類があります。
それぞれの特性などは次のようになります。
水性塗料
水性塗料とは、溶剤として有機溶剤(シンナー等)を使わない塗料や、有機溶剤の割合を減らして水で代替している塗料のことを指します。
以前は油性の塗料を使用する事が多かったのですが、環境に優しい水性塗料を使用する事が多くなっています。
環境に優しい利点がある水性塗料ですが、乾燥に時間がかかる事や耐久性に劣るなどのデメリットもあります。
油性ウレタン塗料
油性ウレタン塗料は石油系溶剤を使用して作られた塗料で、安価で耐久性に優れている塗料です。
仕上がりが美しい特徴がありますが、塗料独特のシンナー臭がするので使用する際には注意が必要です。
塗装を始める前の下準備
いきなり購入した塗料を車に塗装しても仕上がりは良くなりません。
次のような下準備をする必要があります。
デカールやエンブレムを剥がす
綺麗に塗装をしようと考えた際に、デカールやエンブレムなど取り外してその下まで丁寧に処理する必要があります。
デカールやエンブレムは基本的に強力な両面テープで接着しているケースがほとんどなので、剥がし剤などを利用すると簡単に取り外す事ができます。
洗車やマスキング、そして塗装面の研磨などは必須
塗装前に洗車をしてあらかじめ余計なゴミを取り除き塗料を塗りやすくします。
その後に塗装面を研磨して、塗料を塗った際に剥がれにくい状態を作ります。
油膜などが付着していると塗料が剥がれるので、シリコンオフなど使用して脱脂をしておきましょう。
最後にガラス面など広い場所にマスキングシートをかけて、マスキングテープで剥がれないように綺麗にシールをすると準備完了です。
仕上がりをより綺麗にしたい場合は?
DIY塗装で仕上がりをより綺麗にしたい場合は、下地と塗料の密着性を確保する「プライマー」と、発色をよくする効果のある「プラサフ」を塗ると効果的です。
プラサフは一度に厚塗りするのではなく、薄く吹き付け乾かせることを複数回繰り返すと良いでしょう。
全塗装(オールペン)をDIYする手順(缶スプレー)
前述の「塗装を始める前の下準備」を行った後に次の工程で塗装します。
1.ボカシ剤の吹き付け
ボカシ剤とは、塗装した境目をぼかして境界線を分かりにくくするスプレーです。
これを使用する事で色の濁りやムラを目立たなくします。
一度に沢山吹き付けると液垂れの原因となるので、少しずつ薄く吹き付けると良いでしょう。
2.カラースプレーで塗装
本番のスプレー塗装になります。
いきなり車体に吹き付けるのではなく、段ボールなどに一度吹き付けてどのくらいの着色になるか確認するとミスが減ります。
濃い色にしたい場合でも、薄く吹き付け塗り重ねると綺麗な仕上がりになります。
特にパールなどのキラキラが入った塗料を使用する場合は、通常よりも多く重ねて塗りましょう。
3.クリアースプレーで表面処理
カラースプレーが終わって4〜5分後にクリアースプレーで表面処理をします。
光沢や艶消しなどはこの工程で行います。
他の工程同様に重ねて塗り重ねると仕上がりが良くなります。
4.再度ボカシ剤で仕上げ
スプレーを吹き付けた際に発生する細かなザラザラをボカシ剤で馴染ませて滑らかにします。
全塗装(オールペン)をDIYする手順(エアブラシ)
エアブラシとは、圧縮した空気を利用して塗料を吹き付ける塗装方法ですが、エアブラシで塗装するには事前に専用の器具を準備しておく必要があります。
エアブラシ塗装で必要な器具
エアブラシ塗装では主に以下のような器具を使用します。
- スプレーガン本体
- コンプレッサー(圧縮空気を作り出す機械、必要ないスプレーガンも有る)
- エアホース
- エアダスター
- 調色カップ
スプレー塗装同様に「塗装を始める前の下準備」を行った後に次の工程で塗装します。
1.塗料を調合して目的の色を作成
オリジナルで色を作成する場合は、塗料を事前に準備した調色カップで作成します。
色が決まっている場合には、専用塗料を購入してスプレーガン本体にセットします。
2.エアブラシで塗装
セットした塗料を噴射して塗装を開始します。
スプレー同様に薄く色を塗布しますが、重ね塗りをする際には下の塗料が乾いてから重ねます。
乾く前に重ね塗りすると液垂れの原因になるので注意しましょう。
3.表面を滑らかにする
エアブラシで塗装した後は、完全に乾くのを確認してから表面の凸凹を平滑にするために耐水ペーパー(1,500番程度)で磨きをかけます。
4.ウレタンクリアーで表面加工
ツヤ出しなど表面加工の為にウレタンクリアーを吹き付けます。
ここでも重ね塗りする際には一度乾いてから行いましょう。
5.仕上げのコンパウンド
ウレタンクリアーがしっかりと乾いたのを確認して、最後は鏡面用のコンパウンドを使用して磨き上げると完了です。
全塗装(オールペン)をDIYする手順(ローラーハンドル塗装)
ローラーハンドル塗装とは、壁にペンキを塗る際に使用するコロコロ回転する刷毛を利用する塗装方法ですが、ローラーハンドルで塗装するには事前に専用の器具と塗料を準備しておく必要があります。
エアブラシ塗装同様に「塗装を始める前の下準備」を行った後に次の工程で塗装します。
1.塗料の準備
ローラーハンドルで手塗りするには、手塗り用の専用塗料がタカラ塗料などから販売されているので使用するとムラなく塗れます。
塗料は水性塗料、2液ウレタン塗料、ラッカー塗料などがあり、それぞれ説明書通りに水で薄めたり、専用の溶剤などと混ぜて下準備などしましょう。
2.ローラーハンドルで塗装
塗料の準備ができたら、よくかき混ぜながら少量の塗料で薄く塗り重ねましょう。
擦れても良いので、ダマにならないように何度も塗料を引き伸ばしながら均一に塗ります。
一度塗った際に薄いと思ったら、軽く乾いた後に再度重ね塗りをします。
広い面はローラーハンドルを使用し、細かい面は刷毛などを使用して塗ると良いでしょう。
自分で全塗装(オールペン)をする際の注意点
自分で全塗装(オールペン)をする場合には、あらかじめ注意をした方がよい点が多数あります。
塗装をする場所と塗料の飛散には注意
全塗装(オールペン)をする場合の多くは、自宅のガレージかレンタルガレージを使用して塗装をすることが多いと思います。
換気の良い場所で作業を行えばよいですが、ガレージ内などでは注意が必要です。
塗料にはシンナーが多く含まれている製品が多く、換気の悪い場所や近隣住宅が近い際には自身や住民に迷惑をかけることにもなります。
塗装している際にはあまり気になりませんが、いざ終わってみると多くの塗料が飛び散っていることがあります。
近隣の方の敷地を汚すなどした場合はトラブルに繋がります。
仕上がりが天候に左右される
ガレージ以外の場所で作業をする場合には、晴れの日以外は塗装する事ができません。
そして晴れていても風が強い日は、塗料が風でムラになりやすい傾向にあります。
天気が良すぎても塗料がすぐに乾燥しすぎて困ったり、逆に寒すぎると塗料が乾くのに時間がかかる問題もあります。
ブツブツやユズ肌に注意
自分で塗装する際に一番問題になるのが仕上がりです。
前途で解説した「事前の下準備」で行う洗車でゴミ・埃などを綺麗に洗い流せていない場合に表面がブツブツした状態になります。
また古い塗料をきちんと耐水ペーパーで落としておかないと、ユズ肌と言われるボツボツした表面状態の仕上がりになることがあります。
査定が下がる可能性も考慮
塗装の仕上がり状態以外にも気をつけることがあります。
自分で全塗装(オールペン)をすると、見た目は新車同様になり査定が上がりそうに思われますが、ほとんどの場合は査定が下がる傾向にあります。
ディーラーの塗装はDIY塗装よりも遥かに強力に塗装されていますので、10年程度で自然に剥がれるようなことはほとんどありません。
自分で全塗装(オールペン)をした場合には、3年〜5年毎に定期的にメンテナンスをする必要があるので、査定面では不利に働き査定額が20万〜50万円程度落ちることも考慮に入れましょう。
全塗装(オールペン)をする費用
DIYで全塗装(オールペン)をするには様々な方法があり、それぞれに注意点などがあることを解説しました。
ここからは各方法で塗装する際にかかる費用を掘り下げて解説します。
マスキングテープ(500円程度)やマスキングシート(600円程度)などは必要な分を車種によって事前に購入しておきましょう。
缶スプレーで全塗装(オールペン)をする費用
缶スプレーで全塗装(オールペン)をする際に購入する必要があるのは「ボカシ材」「塗料」「クリア」の3種類です。
ソフト99などの車専用メーカーを使用した場合に、1缶辺り下記の費用になります。
- ボカシ剤:900円
- 塗料:1,000円
- クリア:1,300円
Amazon等のネットで購入するともっと安く購入できるかもしれませんが、概算として上記で解説します。
全塗装(オールペン)をする色によって重ね塗りの回数が異なるので、一概に何缶必要などは指定しにくいですが、一般的に1色につき20缶程度あれば安心です。
よってボカシ剤は¥18,000円、塗料は20,000円、クリアは26,000円でトータル64,000円くらいの費用が目安です。
エアブラシで全塗装(オールペン)をする費用
エアブラシで全塗装(オールペン)をする際に必要なものは、前述したようにスプレーガン本体とコンプレッサーです。
スプレーガンは安いものだと5,000円くらいからあり、10,000円くらいのものを購入すれば間違いないかもしれません。
コンプレッサーは意外と高価で、10,000円以上から高いもので100,000円程度のものがあります。
エアブラシの塗料は2液ウレタン
エアブラシの塗料は2液ウレタンを使用するのが一般的です。
塗装に使用する塗料の量は約3Kg〜4Kg程度を参考値として考えると良いでしょう。
関西ペイントで販売されている塗料などは、硬化剤、シンナー、計量カップなど付属して5,000円/kg前後で販売されています。
塗料代で15,000円〜20,000円の予算で考えると良いでしょう。
仕上げに吹きつけるウレタンクリアーも重ね塗りするので3Kg程度購入すると安心です。
ウレタンクリアーは3Kg12,000円〜15,000円くらいで販売しているので少し多めに購入すると足りなかったなどと後悔しなくて済むでしょう。
ローラーハンドルで全塗装(オールペン)をする費用
ローラーハンドルで全塗装(オールペン)をする際には、ローラーハンドルと刷毛や塗料調合用のバケツなどが必要になります。
百円ショップでも購入できますが、塗りムラが出にくい特殊マイクロファイバーのローラーがローラーカバーとのセットで700円程度なのでおすすめです。
ローラーハンドルで手塗りする場合には、タカラ塗料製品はムラが出にくく使用している方が多いようです。
ローラーハンドルでもエアブラシ同様3Kg程度の塗料の量が必要です。
塗料は一般的に3種類から選び、水性塗料は12,000円、2液ウレタンセットで18,000円、ラッカー油性は13,000円程度で購入できます。
専門業者に依頼して全塗装(オールペン)をする費用
専門の業者に全塗装(オールペン)をお願いすると平均して30万円〜40万円程度の費用が掛かります。
決して安い金額ではありませんが、プロが塗装するので仕上がりはとても綺麗になります。
まとめ
愛車を全塗装でDIYする方法やオールペンの注意点について解説しました。
自分で全塗装(オールペン)をすると時間は掛かりますが愛着度は増します。
全塗装(オールペン)をする上での注意点をよく考え、自分でするのかプロに任せるかを考えると後悔することがないでしょう。